〜東方童子異変〜

二章ノ壱《とある神社の大倒壊》

 
 こんこん……こんこん……
 耳障りな小音に、霊夢は薄目を開けた。

(うっさいわね……誰かしら)

 感じる陽射しはまだまだ弱々しい。今は妖怪の時間でもなければ、人間の時間でもないだろう。少なくとも、今代の愽麗の巫女の活動時間ではない。

「萃香、見」

 言いかけて、止める。あの小鬼がいない事を思い出したからだ。
 昨日、萃香は唐突に地底へ帰った。恐らくはあの、朱天とか云う訳の解らない鬼から逃げるためだろう。鬼の住みかに逃げ込むのはどうかと思わなくもない。だが、まぁ、霊夢には関係のない事だ。
 ゴンゴンッ……ゴンゴンッ……
 前言撤回。現在進行形で萃香が必要だ。これに対応してから出ていって欲しかった。

(眠いし、無視するに限るわね……)

 明らかに厄介事としか思えない。
 ガンガンガンガンガンガンッ!!

「…………ああもう!」

 音量を増していく雑音に、霊夢のか細い堪忍袋の尾が切れた。

「一片の欠片も無く絶滅させてやる!!」

 破竹の勢いで飛び起きる。怒りのままに符を掴み取る。激情に駆られて突撃する。
 しかし――

「……ああもぅまどろっこしい! ぶっ飛ばすわ!!」

 それは相手も同じだった。

「マスタァァスパァァァァァク!!!」


 今朝、愽麗神社は今代三度目の倒壊を迎えた。


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