〜東方童子異変〜

一章ノ捌《箸が転がっても可笑しい》

 
 さて、神社からいくらか離れた場所。
 堪えきれなくなったという様に、紫と出会った女は笑い声を上げていた。

「あははははは〜やぁあれが噂に名高いスキマ妖怪かぁ。案外あっさり騙されてくれたねぇ」

 カンッ、と下駄を鳴らし、二本の角を出す。四肢に二本ずつ鎖を従えて、女――朱天は痛そうに腹を抱える。

「ふふふ、あー久方ぶりにいい仕事したねぇ。文、敵はとったのさ。天狗からかや、鬼が出るってところかねぇ。ま、萃香もからかわれてるみたいだし、大義は我にありさ」

 腰に着けた瓢から酒をほんの少し煽る。まるで寝ていた歳月分笑おうとでもいう様に、豪快に笑い続けた。

「ははは……まぁそろそろ会いに行こうかねぇ、我が旧友に」

 一頻り笑った後そう呟くと、足取り軽くその場を去った。


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