意識が、身体に舞い戻る。
ゆっくりと彼はその目を開けた。広がる闇は固く、強い土気が鼻孔をくすぐる。
(ちっ、本格的に不味くなってきやがったか……)
懐かしい感覚を味わいながら彼は独り語ちる。
彼の意識がここにあるということは、彼を縛っていた力が完全に途絶えたということ。
つまり……フランシスが完全に抑えられているということだ。逆にいえばその力を利用する気がない、それが救いとも言えるか。
焦る気持ちを抑え、彼は感覚を地上へと向けた。
――フェンリルとシャルルはまだ戦っているようだ。
あの二人はかみ合いすぎる。地力が低いシャルルがどこまで持つかだろう。
――フランシスたちは森の奥の奥へと向かっている。
フランには特に外傷はないようだ。今すぐにでも助けに行きたいが……
(気になる地獄の方は……ゲェッ!?)
――多勢の影を相手に、一人の少年が爽やかな笑顔を浮かべ暴れに暴れていた。
気にするのはやめた。あそこはどうにでもなりそうだ。最も、あれのいる場所が大丈夫なだけのようだが。
(フランを助けに行きたいのは山々だが……このままいけば地獄が先に落とされるな)
かといって、地獄の異変を起こしている双子を先に止めれば、この反撃のチャンスも失われるだろう。
手数が欲しい。そう、彼が思考を巡らせた時だった。
「にぃさま、フランシスの方を頼めますか? あにさまを出し抜くにはそれしかないかと」
彼にとって、ひどく懐かしい声が――どこからともなく聞こえてきた。
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