オルムの前に現れたのは、大きな鎌を持った少女だった。
『久しぶりだな、ヘル』
「久しぶりです。積もる話もありますが、それは後にしましょうか」
『ああ。ヘルは地獄の双子を頼む』
「分かりました。それでは」
少女はそう言うと、上空から一気に地上へと飛んで行った。
その後ろ姿を眺めながら、オルムは微かな安堵を感じていた。
(このタイミングでヘルが来てくれて良かった。あいつなら何も心配することはないな)
むしろ問題はこちらかもしれない。オルムはフランの方へと意識を向けた。
フランはティニスに担ぎ上げられながら、ツェツェはその後を追うように森の奥へと走っていた。
フランたち3人の後ろには影が迫っていた。
影の数はさほど多くないとはいえ、ツェツェとフランを守りながら戦うのはさすがのティニスでも難しいようだった。
(さてと、いっちょ暴れますかね)
オルムは心の中でそうつぶやくと、上空の意識を再び地上へと急降下させていった。
思っていたよりはフランと長い間離れてしまっていたのだろう。オルムをカメラひとつに縛り付けておくための力は、既に途絶えていた。だがそれ故に巡ってきたチャンスであるとも言える。
オルムは身体に感覚が戻ってくるのを感じていた。
――そう、大蛇の身体に。
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