幻想の夢
―第一話 第四章 B―
著者:白良


 ボクはどうしたいのだろう?
 目の前でツェツェが泣いている。
 ボクはツェツェの辛い顔は見たくない。
 だったら結論は決まっている。

「ボクは人間に抗うよ」
「えっ?」

 ボクはツェツェの手を優しく振りほどいてベットから降りた。

「ちょ、ちょっと!」
「ごめん。でもボクはこのまま何もしないなんてできない」
「……」

 ツェツェは俯いたまま何も言わなかった。

「……ごめん」

 ボクはツェツェに背を向けて部屋から出ようとした。
 ふいに、背後から暖かな温もりが伝わってきた。

「だったら、……私も行く」
「えっ?」

 今度はボクが驚く番だった。ボクに回された腕に力が入る。

「私も行く」

 今度はきっぱりと、言い切った。
 昔からツェツェは、こうと決めたら一歩も譲らない。それに、一緒に連れて行かないことにはボクを離してくれそうもなかった。

「……分かったよ。だけど、危なくなったらすぐに隠れるんだよ」
「うん!」

 ツェツェは泣きながら、でも嬉しそうな顔をしていた。
 ボクは再び心に固く誓った。何としてでも醜い人間たちの世界からツェツェを守らなければ、と。


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