幻想の夢
―第一話 第一章 D―
著者:蒼夜


 拝啓、お母さん、お父さん。天国では元気にしてますか?私は元気です。
 昨日、なんと一ヶ月振りにお客さんがきました♪


「……と、日記お仕舞い! さぁって、夜ご飯の材料を買ってこなくっちゃ!」

 私は階段を駆け降りる。湖を躍るよう、羽根で飛ぶよう軽やかな気持ちで外に出た。太陽がサンサンと輝いているが、そんなものでは今の私は止められない!

「オジサン! 活きの良いの入ってる?」
「お、ツェツェか。相変わらず無駄に元気だなぁ!」
「一言余計! で、あるの? ないの?」
「ガハハハ! 無かったら商売にならねぇよ」

 ざっと選んで籠の中へ。勢い任せにいつもの三倍は買ったけど大丈夫だろう。
 何せ来たのは男の人だ。これくらいは食べるに違いない。

「しっかし世も末だなぁ。ツェツェの処に客が来るなんてよ」
「ここに来る人が少ないだけよ! 本当なら今の十倍は来てるわ!!」
「まぁ……色々あるしなぁ」

 オジサンが言葉を濁した。たぶん、彼女の事だ。

「まだ悪戯は続いてるの?」
「あぁ、そんで近々王都から直々に討伐隊が来るんだとよ。悪魔だの討伐だの、まったく、物騒なもんだ」

 オジサンは大袈裟に身震いして見せた。
 笑わせようとしてるみたいだけど、正直、ちっとも笑えない。

(大丈夫かな……あの子)

 一度、彼女と話し合わなければいけないようだ。

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