〜あたいとあたいとあたいの話〜

【あたいとあたいの話】三人目

 
 まぁ、この座敷猫の話を要約すると――

「最近、撫でて貰えないからどうにかしたい――と」
「おねぇさんはあたいの話を聞いていたのかい?」
「おや、違うのかい?」
「…………いや、まあ……そうなんだけどね」

 歯切れも悪く、目を泳がせながら猫又少女は答える。しかし、それも一瞬。ニヤニヤと眺めていると、くるん、と身を返し猫の姿に変わってしまった。
 トン、とあたいの膝上に少女はのる。

「と、兎も角!」

 ……猫のままで喋れるのか。今度あたいの代弁を頼んでみよう。

「そういう訳だから!早くこれから死体ができる場所を教えてよおねぇさん!!」
「や、話が見えてこないよ」
「……おねぇさん、本当に話を聞いていたのかい?」
「全然(キリッ」
「…………」

 唖然とした猫はこんな得も言われね顔をするのか……
 ……
 や、あたいにも弁解はある。
 この猫又少女は来る度同じような話しかしないのだ。そりゃ、口を利かない幽霊達よか話のしがい、話のされがいはある。だが、同じ話を長々と来る度繰り返されては眠くなるのは仕方ない。そもそも映姫様から説教中、眠れるように訓練を積んできたあたいに寝るなというのが無理な話だ。
 増してや、話を聞くだけなら兎も角、答えを求められても困る。

「あたいにゃ正答が出せないからねぇ」
「え?」
「や、何でもないよ」

 両手で黒猫を抱き上げる。次いで、あたいも立ち上がった。

「さて、一仕事しようか。あんたも来るかい?」

 黒猫は目をパチパチと瞬かせる。だがそれも一瞬で、あたいの手からするりと抜ける。その足を地面につける頃には、黒猫は再び少女の姿に戻っていた。

「そうこなくっちゃ!生きの良い死体を頼むよ、おね〜さん♪」

 

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