リーネフという掴みどころのない青年を、ツェツェは家に招きいれた。
「いやぁ、立派な家ですねぇ。私の住んでいたボロ家とは大違いですね。あぁ、私が住んでいたのはここからもっと西に行ったところでしてね……」
リーネフは嬉しそうにずぅっと喋り続けていた。ツェツェが家に来るまでの間も何だかんだと喋り続けていたし、もしかしたら久しく誰とも喋っていなかったんじゃないのかと思った。
「えぇっと、食事の用意をしますので、しばらく待っていてください」
ツェツェは4人掛けのテーブルにリーネフを案内し、食料庫に食材を取りに向かった。食料庫と言っても、大した大きさがあるわけでもなく、家の小さな物置を食料が保存できるように改築しただけのものだ。
「うーん、何にしようかなぁ……」
ツェツェは一瞬迷った後、色とりどりの野菜や果物、腐らないように梱包された生肉を持って、台所へ向かった。
台所からはリーネフが座っているのが見える。さっきまでずっと喋り続けていた彼が静かに待っているというのも何だか不思議な感じがした。
ツェツェは梱包された生肉を取り出した。結局深夜に森に行ってから一睡もしていないから、日付の感覚がおかしくなってしまいそうだった。この肉は昨日の夕方に買いに行ったもの。ツェツェの夕食に使われた残りだ。本当は今日の昼食にと思っていたが、また買いに行けばいいだけのことだ。
ツェツェは生肉を鉄板の上に広げ、火にかけた。肉が焼けるまでの間に手早く色とりどりの新鮮な食材を切り分ける。毎日こうして一人で料理をしているのでその流れはスムーズだった。肉が焼けたところでおいしそうに皿に盛りつけた。
「お待たせしましたー」
ツェツェが慣れた手つきで作り上げた料理をリーネフの前に並べた。色とりどりの野菜に囲まれた中央に肉が存在感を持っていた。作るのにさほど苦労はしなかったが、誰かに食べてもらうとなると、やはり緊張する。
「あぁ、ありがとうございます」
リーネフは体の前で左手をすばやく動かした。何かの形を描いたようにも見えたが、それを聞く前にリーネフは料理に飛びついた。
「うわぁ……」
リーネフの食べっぷりはそれは見事なもので、ものの数分ですべて平らげてしまった。ツェツェはあきれるやら感心するやらで、なんと言ってよいか分からなかった。
「ごちそうさま。いやぁ、とても美味しかったよ」
「あ、ありがとうございます」
やはり自分が作った料理を、美味しかったと言ってもらえると嬉しかった。ツェツェは皿を片付け、テーブルを挟んでリーネフの向かい側に座った。
「それで、あなたが私たちの味方というのはどういうことなのか、詳しく教えていただけませんか?」
さっきはあまりの唐突さに会話の主導権を持っていかれたが、時間を置いたせいか多少頭の中で整理がついていた。今度はこちらから仕掛ける番だ。
「ふむ。それはですねぇ……」
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