森から離れた草原の上で、輝くのは天より下される裁きの光。
空の彼方から告げられる断罪の光は、瞬く間に周りの闇をも切り裂き、地にいる者を砕かんと大地にその身を叩きつける。
しかし、その光をも白き強大な狼は引き裂いて見せる。
「ほう、さすがだな……」
そんな光景を見て、銀狼を目の前にしていたシャルルは不敵に笑いを見せる。
「これくらいの雷……受けきれなくては、神とは戦えませんからね」
そう言って、気高き銀狼は雷の衝撃で崩していた態勢をゆっくりと起こす。
「それにしても……」
そして、暗闇に消え入るような声で銀狼――リーネフは口にする。
「まさか、これほどとは……」
そう、本当にこれほどとは思っていなかったのだ。
かつて、自らと対峙した魔法と呼ばれた幻想の者の力。その力を自らの力として使う事の出来る能力。
故にその力を有した魔法を喰らう者……夢喰い。
この世に生きる魔法にうとまれ憎まれ、そして恐れられた世界最強の審判者。
彼だからこそ、神に反抗し、その腕を喰い破ったと逸話を持つフェンリルであるリーネフと戦う事が出来てる。
彼でなければリーネフと対抗する事ができただろうか。否、できるはずもあるまい。
フェンリルは神とも謳われた魔物の中でも最上位の存在。
彼と戦いたければ、それなりの力を要さないといけない。
ならば、リーネフと対等に戦える人間はどれくらいいるだろうか。
その力の大きさを最新の兵器を有した軍でさえ、きっと十では足りぬ。百でも足りぬ。万の軍勢にてようやく拮抗するだろう。
「ふっふっふ、やはり、あなたは面白いひとですね」
「はっ! ほざけ」
そして、それは今ここでリーネフと対峙しているシャルルも承知の事だった。
リーネフは本気を出せば自分どころか、後ろで気をうしなっているリインですら対等に戦えるかどうか怪しい。それほどまでにリーネフと言う存在は大きいのだ。
「なぜ……なぜ攻撃してこない?」
だからこそ、シャルルが顔をしかめてそう問いかける。
なぜなら、力が勝っているであろうというリーネフが、守りの傾向を止めようとしないのである。
それは異様な光景以外の何物でもないのである。
「あなたは、危険すぎますからね……」
そして、シャルルの言葉を返すかのようにリーネフは鋭いきばを覗かせる口を開きつぶやく。
「あなたの力は危険すぎるのです。あなたがこの戦いに参入すれば、きっと瞬く間に戦況が変わってしまう。そうなっては面白くない。そうは思いませんか?」
「なにを……」
「わかりませんか。ならばそれはそれでいいです。私の目的はあなたを殺すことではない。あなたと言うイレギュラーを抑えるそのためだけに、私はあなたと戦おう!!」
「お前……何が目的だ?」
「先ほどから行っている通り、私の目的は世界の修正。それ以外にありません。ですが、今の私の目的は、彼ら……いや、彼女らの物語りの終末。それ以外にありません……」
そう言うと、銀狼は再び立ちふさがる。
まるで、シャルルの目の前にある森を隠すかのように……。
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