「くそう! くそうぅっ! なんだよ!」
遠見の水晶、その奥に映る光景に、スコールは吐き捨てた。
オルムと呼ばれていた守護が離れ、僅かな不安の人間の軍の脅威も去った。ようやく、審判者であるあの少年を殺せる……そう思って影を送り込んだのだ。
だが、フランが無抵抗にもかかわらず、それは今でも果たせずにいる。原因は先ほどまで仲間であったはずの二人の少女だ。
「なんなんだよあいつら!!」
ティニスというエルフが影を払い、ツェツェと名乗った人間がフランシスの身を背に隠す。
彼女達はフランシスを敵だと知った、なのに何故っ!
どうして、同族を、仲間を追い払ってまで――あの審判者を守ろうというのか!影は、彼らは、死してなお家族の仇をとろうとしているだけなのに!仲間に敵とされ自分の大切な者を危険に曝してまで――何故っ。
「……あぁ」
これは――ひどい裏切りだ。
このままだとリーネフの、とおさまの言っていた計画に支障がでてしまう!
スコールは急いで立ち上がった。写り込む光景も含めて、見せる以外に能のないこの水晶がひどく忌々しい。だが、今は水晶を叩き割りたくなる衝動をこらえ、状況をかえるため踵を返しその場を立ち去る。
「…………信じてたのに」
一瞬、視界の端の水晶がまるで別の光景に移り変わった気がした。
それは――たぶん、、、
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