「始まったみたいですねぇ」
暗い坑道にリーネフの声が響いた。
「私は敵を排除しに向かいますので。ツェツェさん、ティニスさんはここで待っていてくださいね」
「はい。……お気を付けて」
「ボクが行かなくても本当に大丈夫?」
「ええ、敵の狙いはティニスさんあなたなのですから。それにちょっと厄介なのがいましてねぇ」
憂いているような口振りとは裏腹に、リーネフは不敵な笑みを浮かべた。
「しかし、今回はこちらにミドガルズオルムがついていますから」
そう言ってリーネフは首からぶら下げたカメラを持ち上げた。そのカメラはまさしくフランシスが持っていたものだ。
『ケッ。誰がテメエなんかの手伝いするかよ』
「おやぁ、フランシス君がどうなっても良いのですかぁ?」
『……』
リーネフの傍らには、フランシスが気を失って倒れていた。
「過去の記憶を思い出しただけでこの様とは……やはり戦力として期待しなくて正解だったかもしれませんねぇ」
リーネフは冷徹な目でフランシスを見下した。
「少しは私の戦力になるのではと思ってみましたが……。しばらく眠っていていただくとしましょうか」
リーネフは踵を返すとツェツェ達に背を向けて言った。
「ツェツェさん、ティニスさん、もし私が戻ってくる前に敵がここまで来てしまったら……その時は迷わず、彼を囮にして逃げるのですよ」
「……はい」
ツェツェは一瞬迷ったような顔をしたが、すぐに決意に満ちた顔で頷いた。
リーネフはその返事に満足したのか、真っ直ぐに坑道の外へ歩き出した。
そう、戦場に向かって。
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