武器を振り上げた兵士達の怒声が、森の奥底深くまで響いていた。彼らが森を正すまで、後寸刻とかからないだろう。
頬に滴る雫を払い、少年――スコールはその身を起こした。
『……動いた』
「うん、予定通りだね〜さっすがととさまだ!」
傍から聞こえるハティの言葉に、スコールは愉しげに返す。闇に沈むハティの声はいつもより涼やかで、どこか、消えかけの泡の様に儚げだった。
それが気になって、つい、スコールは無駄口を開いてしまう。
「ね、ハティ……痛くない?」
『…………うん』
「そっか〜かかさま、元気にしてるかな〜」
『……元気。隣にいる』
「い〜な〜ハティは先にかかさまに会えてさ〜」
『すぐ、会える。だから……』
「わかった……ごめんね、ハティ」
優しく、優しく、スコールはハティの頭を撫でる……撫でるその手が湿っていく。それが、スコールにはどうしてか嫌だった。
大好きな、ハティのモノなのに――
「太陽は祖の生を司り……」
少年は高らかに
『……月隠は祖の死を司り』
少女は密やかに
「『我らは逸れ追う狼なり」』
己れの姿を紡いでいく。
「太陽の眷たる生よ! 父を喰らいし我より逃げよ!!」
『月隠に属する死よ。母を飲みし……我より離れよ』
「恐れ…………」
『…………惑え』
「我が名はスコール! 生者すらも追う者なり!!」
少年は強く、強く、どこまでも強く叫びをあげる。天の果てへ地の果てへ、その先にへ届けと。
……少女の、亡骸をその胸に。
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