空に昇る日が少し天頂に向かいしばらく経った頃。 僕が連れてこられたのは森から離れたツェツェ達の街の地下らしき所だった。 ”らしき所”と言ったのは一つ理由があって。 この坑道のような地下に入ったのは町の外れの工場の影になっていた所。しかし、それからとても長い間歩き続けているのだ。たぶん、森から帰ってくるのと同じくらい長い時間。
『なぁ、フラン……』 「なんだい?」 『ほんとに大丈夫なのかよ?』 「……まだわからない」
目の前を歩く、オルムの言葉を借りるなら似非神父が僕たちに協力する……。 約束をとりつけたのはいいものの。この人のどこまでが本当で、どこからが嘘なのかわからない。 オルムが心配するのは仕方のない事だった。 だけど、僕たちには他に方法がない……。 ツェツェもティニスも見つからないこの状況で、今日の夕方までの解決……。 これは不可能といっても過言ではなった。
「とはいえ……」
こうも怪しい似非神父を信用してもよかったのだろうか。 自分で言い出した事だけど、こうも暗い怪しい坑道のような地下を歩かされていると不安になってくる。
「着きましたよ」
そんな事を考えていると、一人だけランタンを持って前を歩いていた似非神父が振り返ってそう告げる。
「着いたって……」
そこにあったのは坑道を抜けた後の広い空間。 だけど、それ以上は暗くてよくわからない。
「ようやく、来たね……」 「『!?』」
ここがどこだかわからずに辺りを見渡していると、不意に聞こえてきたのは聞き覚えのある声。
「ティニス……」
甲高い足音を鳴らしながら、僕らの灯りが映る範囲に現れた声の主は僕らの探している”魔法”……エルフ、ティニスだった。
「やぁ、おにいさん。ボクはお兄さんたちを侮ってたよ。お兄さんたちがまさか”審判者”だとは思わなかったよ」 「ティニス、きいてくれ!」 「少し前のボクだったら、君たちに消されてもよかったと思ったかもしれない。――だけど、今はダメなんだ……」 「違うんだ、ティニス!」 「何が違うっていうんですか」 「!?」
突然背中から羽交い絞めにされ、言葉に詰まってしまう。 僕にこんな事が出来るのはティニス以外にいるとしたら似非神父くらいだ。 だけど、その前に聞こえた声は……。
『んな、てめぇは……』 「まさか、ツェツェ!?」 「はい、そうですよ。フランシスさん」 「離してください! 僕はあなたとの約束を守るために……」 「約束? あなたの約束は本当に信じれるものなんですか?」 「な、何を言って……?」 「知っていますよ、私は。あなたが今こうして神に使わされた魔法を狩るための審判者になったのは、ある人との約束を破ったせいなんでしょ?」 「……!?」
ツェツェに言われた一言に、僕の心臓が止まりそうになる。 なんで、ツェツェはそんな事を言いだした? なんで、ツェツェがその事をしってる?
なんで……?
「あなたは、ある人との約束を破った。そのせいであなたは審判者になる必要があった」
やめて……
「当然ですよね。あなたが起こした事はそれだけ重大な罪だった」
やめて……くれ……。
「審判者? 神の使い? 聞いてあきれますね。あなた達がやっている事は所詮殺戮に過ぎません。あなた達が狩る魔法にも大切なモノがある。意思がある。それを平気で踏みにじれるあなた達のやっている事が信じられません。……ああ、そういえばあなたがやっている事が殺戮なら。慣れていることなのですか」
本当に、やめてくれ……。
「あなたが審判者になった。その理由はあなたが約束を破ったせいで……」 「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「あなたのお姉さんは、死んでしまったのだから……」 |