「同じ作戦で森を襲撃しろだとっ!?」
「ああ、それでケリがつくからな」
あまりにサラリと、シャルルは当然の事のように言う。笑い飛ばす事もできず、馬鹿な、と将軍は声を漏らすしかできなかった。付き合いの長いリィンですら、シャルルの真意がまるで読み取れない。
訳が分からず、ぽかんとしたリィンを小さくシャルルは笑う。それに気付いたリィンが口を開くよりも先に、シャルルは作戦の表面上の説明を始めた。
「お前らが負けたのは魔法を科学でどうにかしようとしたからだ。幻想の法である魔法と、人間の法である科学はその次元がまるで違うからな。余程の物量がない限り、お前ら程度が理解できるような科学じゃ、お前らの理解の範疇を越えた魔法を打ち倒す事はできない」
「ならば! 同じ作戦をする意味など――」
「だが」
シャルルは強引に将軍の言葉を遮る。
「今のお前らの戦力と、やつらの力は殆んど五分と五分だ」
「シャルル!? お前はな――むぐぅ!?」
何を言ってるんだ、と続けようとするが、リィンは口を塞がれた。口をもごつかせながら不満顔で睨み付けるが、シャルルはそ知らぬ顔だ。
(何を考えておるんだ!この阿呆は!!)
怒りの視線で訴える。
確かにまだハーフエルフだけならば、シャルルの言う通り互角――いや、軍が圧倒的に優勢だっただろう。それには異論はない。
だが、向こうにはあの神食らいがいるのだ。文字通り幻想の神を喰らった存在に、ただの素人集団ではまるでお話にならない。お伽噺にすらさせて貰えない。
にも関わらず、シャルルは更に嘘を塗り重ねていく。
「何故お前らが殺されなかったか。いや、殺せなかったんだ。それだけの余力がなかったっつー事だ」
「な、成る程な……では次は貴殿らが協力するという事か、シャルル殿?」
「それでもいいがね……お前らはそれでいいのか?」
「……何だと?」
「お付きの傭兵のお陰で勝ちましたーなんて格好のつかない事でいいのかってことだ」
「そ、それは……」
「俺らとしても金さえ貰えればいいからな。だから――」
次の瞬間、リィンは己の耳を疑った。
「簡単な魔法を教えてやる。ま、戦力差は埋まるだろうって程度のやつをな」
「「なッ……」」
シャルルを残して二人は思わず絶句する。それを気にするでもなく、話は終わったとばかりにシャルルは席を立った。
「だから初め通り、もしもイレギュラーが出たら俺達が片付ける。それでいいな?」
その一言を付け加えて、シャルルはリィンの手を取る。訳も分からないまま、リィンは部屋から引きずられていった。
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