「シャルル、もどったぞ」
ティニスの森から少し離れた、国軍の野営地。 そこは広すぎる草原にしいた広々とした場所だった。 東の地平線から昇る太陽が草原を照らし、そこはあたかも夢の世界をイメージさせるかのような光景がそこに広がっている。 だが、そんな光景を見たとしてもリインは何も思わなかった。 なぜなら、夢だけの世界に意味などないのだから。 そんな事を考えながら、リインは中でも一際大きなテントに入る。
「おぅ、リイン。やっともどったか」
その中にいたのはシャルルだった。 しかし、そこにいたシャルルはリインの想像と遥かに違っていた。
「――シャルル。年頃の女の子が夜更かしをして帰って来たのだから、少し位心配と言うものをしても……」 「リインを襲うような男は、そのすぐ後に灰になる……いや、消し炭すらのこりゃしねぇよ!」 「……」 「まて、リイン。わかった。俺が悪かったから。その布でまかれた”俺の武器”を振り上げるな!」 「全く、お前はやっぱりデリカシーと言うものが足りないな。私は今まであの森の中で”夢縫い”と一緒に……って、どこに行く」 「少し、狩りの時間を楽しみに」 「夢縫いに手を出したら許さんぞ」 「まさか、そんな内密な関係に!? あんのロリコンがぁああ!」 「落ち着け、馬鹿」
――ゴチン
「ぐぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 「私はただ、あの森の中でみちに……、いやなんでもない。少し、あの夢縫いの奴に道を案内させていただけだ」
リインはシャルルから顔をそらしながらそう言い放った。
「それで、だ。少し、あの夢縫いには世話になったからな。今回のエルフの事については今日の夕方まで待ってやる事になった」 「へぇ……」 「だから、お前も今日の夕方までは少し待ってやってくれ……って、なんで戦闘の準備をしておるのだ?」
リインが疑わしい目をしているのを余所に、シャルルはリインの持っていた長い袋を受け取る。
「俺は始めっからあのエルフについては興味ねぇっていってるだろ? だったら、あの小僧どもが何とかしてくれるなら俺のする事ぁないなぁ」 「まぁ、それも成功すればの話だけどな……いや、私が聞いてるのはお前が戦闘の準備をしている理由だ。お前はどこかの神でも殺す気か?」 「そうだ」 「――はぁ?」
あまりにも突拍子もないシャルルの言葉に、リインは呆けてしまう。
「さぁ、始めようぜ。神喰らい――フェンリル狩りをよぉ」
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