「あれ? なんだこれ! ボクは一体どうなったんだッ!?」
なぎ倒された木々の中。人影はないのにそんな声だけが聞こえてくる。
その音源となるのはなぎ倒された木々のほぼ中心にある黒く四角い箱。つまりはオルムから聞こえてくる。
そしてその様子を確認した僕は、ゆっくりとオルムに向かって歩きだす。
「あ、おい! お前、ボクに一体何をした!?」
近づく僕に気がついたのか。オルムの中から聞こえてくる声――つまりティニスは僕に向かってそう言い放つ。
「何って……話を聞いてくれなさそうだから。オルムの中に収まってもらっただけだよ」
「オルムって……この変なカメラの事か!?」
「変なカメラとはご挨拶だなぁ」
先ほどまではティニスの声だったカメラが、今度はいつものオルムの声が出てくる。
自分で仕向けといてなんだけど。ものすごく気持ち悪い。
「なんだ、お前。ボクの口を使って言葉を話すな!」
「もともとは俺の体だぜぇ? まぁいい。いい加減そのボクってのはやめにしないか? ダークエルフのお譲ちゃんよ」
「……は?」
あまりにも予想だにしないオルムの言葉に思わず僕は耳を疑う。
「オルム……? 今、なんて?」
「なんだぁ。フランくんよぉ、頭だけじゃなくて遂に耳まで悪くなったのかぁ?」
「このレンズって、石で殴るとわれるよね?」
「よし、わかった。話し合おう。だから落ち着け」
まったく……。
「お譲ちゃんって、何? ティニスは男の子だよね?」
「あん、いつ誰がそんな事を言ったんだぁ?」
「いや、だって……」
ティニスは人間の男の子が着ているような服装をしていた。
しかもティニスは金色の短い髪をしている。そして、いつも体のどこかが泥だらけになっていたのだ。女の子と言われても信じがたい。
「どこからどう見ても女の子には見えないなぁ〜」
「うっさいなぁ! 女で悪いかぁ!」
「え、本当なの?」
「胸が大きくなくても、ボクは女だぁ!」
なぜだろう。
姿形はカメラなのに、なぜかものすごく泣いているような気がする。
――ガサッ!
次の瞬間、僕の後ろから草をかき分ける音が聞こえてきた。
その音に呼応するように僕は身構えた。
まさか、もうツェツェの言っていた国軍が来たのだろうか……。
そして、次の瞬間。僕の目の前に現れたのは――
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