僕はオルムと共に、森の中を歩いていた。
うっそうと茂った木々が高々と天に向かって伸びている。太陽の光は、葉っぱの隙間から僕を落ち着かせるように優しく降り注いでいた。
「それにしても広いなぁ……」
最初に森に来たときは、舗装された道を真っ直ぐ進んだだけなので、さほど広いとは感じかなった。しかし、今回はこの森のどこにいるのか分からないティニスを探さなければならない。
オルムは精霊の気を感じることができるが、単に近くにいるのか遠くにいるのかを探ることしか出来ない。だから僕はこうして、道なき道を進まなければならないのである。
「はーっ、……ちょっと休憩ー」
僕はそういって近くにあった切り株に腰を掛けた。もう2時間くらい歩いたような気がする。
「どう? 近くに気配はない?」
『なンにも感じねぇな』
オルムが即答するので僕は溜息を吐いた。これだけ歩いて気配すら察知出来ないとは思ってもみなかった。
もっとこう、ティニスのほうから何か仕掛けてくるんじゃないかと思っていたのだけれど……
『……! フランっ、来るぞっ!』
「え?」
僕はオルムの突然の言葉に動揺しつつ、座っていた切り株から飛び退いた。直後、切り株が地面ごと砕け散った。
「な、な、なんじゃこりゃーっ!」
僕は驚きのあまり叫んでしまった。
『ティニスだ。あンの野郎、こんな力を持っていやがったのか』
もうもうと立ち込める砂ぼこりが晴れると、そこにはティニスらしき精霊がいた。だが、ティニスが纏うオーラは最初に相見えた時とは全く違っていた。哀愁を帯びているようでいて、激しい怒りに包まれているような、複雑な思いが入り混じっているように思えた。
『オイ! ボーっとしてる暇なんかねェぞ!』
「っ!」
ティニスは僕に休む間もなく攻撃を仕掛けてきた。木の根、というよりも幹とでも呼べそうなほどの太さの根が、地面から次々に飛び出てくる。
「ちょ、ま、うわっ!」
あまりの猛攻に、先ほどまで歩き疲れていたことなどどこかへ飛んで行ってしまった。
「くっ! これじゃ、ティニスを説得することなんて出来ないじゃないかっ」
『兎に角、奴の動きを止めるしかないだろうな』
簡単に言ってくれる。ティニスが軍と戦わないようにするのが、今回僕に課せられた使命でもあるわけだが、ティニスを倒してしまっては元も子もない。
どうにかしてティニスに落ち着いてもらわなければならない。
だが、オルムを構えている余裕はないし、ティニスに近づこうにも巨大な根が行く手を阻む。
「何か、何かあるはずだ」
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