幻想の夢
―第一話 第ニ章 C―
著者:B-ta


「なぁ、どうすんだよ。これからはよぅ」

 暗闇に沈む宿の一室。その中で僕が目を覚ますと、そんなオルムの声が聞こえてきた。
 まだ覚めきれてない頭で、どうやって僕が起きた事がわかったのか……とか。いろいろ思うことはあったが、

「どうするも何も、僕たちがやるべき事は一つしかないよ」

 このままスルーするとうるさいのでそう返しておく。
 まだ眠たい目を擦りながら、今まで体を預けていたベッドから体を起こし、微かな月の光が差し込む窓から外の様子を覗く。
 この町に帰ってきた時にはあれほどあった活気は、すでに静まり返っていた。栄え始めたこの町でも眠ることはあるのだなぁ。……と、そんな感想を抱いていた。

「一つしかない……って、あいつは俺たちの言葉を聞こうとしなかったンだぜ?」

 オルムは事実を言ったにすぎない。
 だけど……、何故だろう。オルムのその一言は僕の心を抉る。

「……その時にやらなくちゃいけない事も。一つしかないでしょ?」

 自分で決めたことなのに。僕がここにいる理由のはずなのに。僕が出したその一言は、僕自信を傷つける。

「……まぁ、お前が決めたことならなんも言わねぇがよぅ。だがよ。フラン」
「なに?」
「……そんな泣きそうな顔で言っても、説得力ねぇぞ」
「うるさいなぁ。僕だって……!」
「思うことの一つやナンチャラッテか? オメェの考える事くらいお見通しだってンだ。このあまちゃんが、一体何年一緒にいると思ってんだ?」

 あぁこいつは卑怯だ。
 いつも口が悪くてひねくれてるくせに、僕がへこみそうになった時。こうやって僕を励ましてくれる。だから僕は今までずっと旅ができたんだ。
 ……帰る場所がなくなったあの日から。ずっと。

「まぁ、俺にとっちゃあ。お前といた時間なんて一瞬だがな」

 ……この一言がなければもっと頼れるのに。

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