「なぁ、どうすんだよ。これからはよぅ」
暗闇に沈む宿の一室。その中で僕が目を覚ますと、そんなオルムの声が聞こえてきた。
まだ覚めきれてない頭で、どうやって僕が起きた事がわかったのか……とか。いろいろ思うことはあったが、
「どうするも何も、僕たちがやるべき事は一つしかないよ」
このままスルーするとうるさいのでそう返しておく。
まだ眠たい目を擦りながら、今まで体を預けていたベッドから体を起こし、微かな月の光が差し込む窓から外の様子を覗く。
この町に帰ってきた時にはあれほどあった活気は、すでに静まり返っていた。栄え始めたこの町でも眠ることはあるのだなぁ。……と、そんな感想を抱いていた。
「一つしかない……って、あいつは俺たちの言葉を聞こうとしなかったンだぜ?」
オルムは事実を言ったにすぎない。
だけど……、何故だろう。オルムのその一言は僕の心を抉る。
「……その時にやらなくちゃいけない事も。一つしかないでしょ?」
自分で決めたことなのに。僕がここにいる理由のはずなのに。僕が出したその一言は、僕自信を傷つける。
「……まぁ、お前が決めたことならなんも言わねぇがよぅ。だがよ。フラン」
「なに?」
「……そんな泣きそうな顔で言っても、説得力ねぇぞ」
「うるさいなぁ。僕だって……!」
「思うことの一つやナンチャラッテか? オメェの考える事くらいお見通しだってンだ。このあまちゃんが、一体何年一緒にいると思ってんだ?」
あぁこいつは卑怯だ。
いつも口が悪くてひねくれてるくせに、僕がへこみそうになった時。こうやって僕を励ましてくれる。だから僕は今までずっと旅ができたんだ。
……帰る場所がなくなったあの日から。ずっと。
「まぁ、俺にとっちゃあ。お前といた時間なんて一瞬だがな」
……この一言がなければもっと頼れるのに。
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