ガラス張り地面、緑光が降り注ぐ宇宙、歪み曲がった木々山々、澄み渡った彫刻とブリキの瓦礫。
此処こそ、遍く何処であり……三千世界の夢の果て。
「……報告いたします。フランシスが目標と接触したようです」
漆黒の修道衣を纏った少女はゆっくりとそう告げた。敬虔なシスターのようにも見えるが、その手は異形の大鎌を支えていた。まるで磔刑へ向かう最中のように。
それは罪人故か、はたまたその逆か。ただ、少女の振り撒く闇は、まさに死そのモノだった。
「そのまま目標と戦闘。しかし、その消滅には至らなかったようです」
少女は空の玉座に語りかけていた。無論、無影の玉座から言葉は帰ってこない。気にする事もなく、少女は頭を垂れたまま言葉を続ける。
「フランシスにはヨルムンガンドがついていますから、いかなる場合でも失敗はあり得ないでしょう」
『@μ£¢てゐ*★$Q』
「……その時は、この私が」
何処からともなく響いた異形の言葉に少女は重々しく返す。
『”&*ノシ”』
その言葉を機に、まずは玉座が失せた。
ガラガラと音を立てて、世界が崩壊していく。夢の欠片はキラキラと淀みながら、現の欠片はドロドロと輝きながら割れていく。
足場が消え失せようとも、少女は頭を垂れ続けていた。
何かが壊れ、何かが生まれ、何かが留まり……
いつの間にか、少女の周りには星空が広がっていた。一粒、ニ粒の星が輝く艶のない夜空。
「………………いつまでこのような事を続けなさるつもりなのですか、貴方は」
誰に語るともなく、死を司る少女は呟く。
星々が死に絶えた繊月の闇の下で……
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