幻想の夢
―第一話 第一章 B―
著者:白良


 翌朝、外からの喧騒で目が覚めた。

「んー……っ、ふゎぁぁっ……」

 大きく伸びをして、大きな欠伸をしつつ、窓から外を眺めた。
 どうやら朝の市場が始まっているようだった。
 色とりどりの野菜や果物、銀色に艶めかしく光る魚、大きな樽に入った小麦。
 ここは小さな村ではあるが、市場は活気で満ち溢れていた。

『ずいぶんと賑やかじゃねぇか』

 オルムが言った。

「そうだね。よしっ、あれだけ人がいるなら少しくらい情報はありそうだ」

 僕はさっさと着替えを済ませ、オルムを首にかけて宿を出た。
 外に出た途端、喧騒がより一層大きくなった。
 僕は市場の喧騒の中を歩いた。何はともあれ、まずは朝食を取らねばならない。
 色鮮やかな色彩が目まぐるしく動く。パンの香ばしい匂いが堪らない。
 僕は細長いパンと、赤い木の実を買った。この赤い木の実を割って、中の果汁をパンと一緒に食べるのがおいしいのだ。口の中に、甘酸っぱさと濃厚な香りが充満して、すぅっと融けていく。

「やっぱりおいしいなぁー」

 やっぱり、この甘酸っぱさと絶妙加減が堪らないなぁ。

『なあ、おい』

 昨日は散々な目に遭ったけど、今日は結構良い日になるかも。

『おい、聞いてるのか、フラン』

「なんだい、オルム?」

 僕は耳を疑った。
『お前の朝飯、持っていかれたぞ』

「は……?」

 僕は自分の手元を見て愕然とした。
 さっきまであったはずのパンが、木の実が、跡形もなく消えていたのだ!

「まだ一口しか食べてないのに……」

 何が起きたんだ?

『言っただろう。目ぇ付けられたみたいだって、な』

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