翌朝、外からの喧騒で目が覚めた。
「んー……っ、ふゎぁぁっ……」
大きく伸びをして、大きな欠伸をしつつ、窓から外を眺めた。
どうやら朝の市場が始まっているようだった。
色とりどりの野菜や果物、銀色に艶めかしく光る魚、大きな樽に入った小麦。
ここは小さな村ではあるが、市場は活気で満ち溢れていた。
『ずいぶんと賑やかじゃねぇか』
オルムが言った。
「そうだね。よしっ、あれだけ人がいるなら少しくらい情報はありそうだ」
僕はさっさと着替えを済ませ、オルムを首にかけて宿を出た。
外に出た途端、喧騒がより一層大きくなった。
僕は市場の喧騒の中を歩いた。何はともあれ、まずは朝食を取らねばならない。
色鮮やかな色彩が目まぐるしく動く。パンの香ばしい匂いが堪らない。
僕は細長いパンと、赤い木の実を買った。この赤い木の実を割って、中の果汁をパンと一緒に食べるのがおいしいのだ。口の中に、甘酸っぱさと濃厚な香りが充満して、すぅっと融けていく。
「やっぱりおいしいなぁー」
やっぱり、この甘酸っぱさと絶妙加減が堪らないなぁ。
『なあ、おい』
昨日は散々な目に遭ったけど、今日は結構良い日になるかも。
『おい、聞いてるのか、フラン』
「なんだい、オルム?」
僕は耳を疑った。
『お前の朝飯、持っていかれたぞ』
「は……?」
僕は自分の手元を見て愕然とした。
さっきまであったはずのパンが、木の実が、跡形もなく消えていたのだ!
「まだ一口しか食べてないのに……」
何が起きたんだ?
『言っただろう。目ぇ付けられたみたいだって、な』
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